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構造的な“分断”を越える──サプライチェーンデータで進化する調達DX 創業80年企業の次なる挑戦

調達部 工事発注G 予算編成部 柴崎 誠一氏

課題・効果

課題
  • 予算部門と現場発注の分断による原価ブレの発生
  • 急場対応による単価の振れ幅拡大
  • 2D図面による情報伝達による解釈ズレ・手戻りリスク
効果
  • 発注・変更履歴の可視化による原価管理精度の向上
  • 供給ネットワーク活用による単価ブレの抑制と安定調達
  • 3D CAD連携による手戻り削減と工程安定化

インタビュー

予算は本店、発注は現場。構造的に生じる“乖離”

――まずは三晃空調様の事業内容と、柴崎様のご担当領域について教えてください。

柴崎氏 三晃空調は、空調設備・衛生設備の設計施工を行う設備サブコンです。

私は大阪本店にて、一定規模以上の案件を対象に原価検討・予算編成を担当しています。営業が受注した案件に対し、図面や仕様書をもとに設計及び積算部が見積りを作成し、それを基に細部にわたり原価の洗い出しを行い、徴収した協力業者の見積を精査しながら原価を積み上げていきます。いわば「案件の採算を設計する」役割です。

予算が確定すると、案件は工事部へ引き継がれ、実際の発注や現場運用は各現場長が担います。この分業体制は合理的で、スピード感を持って現場を回すために必要な仕組みです。一方で、「予算を立てる部門」と「発注を行う現場」が分かれていることで、情報が分断されやすい構造でもあります。

特にBALLASの取り扱う製作金物は、現場職長ごとに取引実績のある取引先へ発注するケースが多く、発注先ごとに単価や条件は異なります。設備工事全体に占める割合は1〜5%程度と小さく見えますが、案件が積み重なれば決して無視できる金額ではありません。

さらに空調・衛生工事では、図面通りにいかないことが日常です。建築意匠や構造体の形状に収まりを合わせたり、既設設備との取り合い、想定外の干渉。急ぎで部材が必要になることは多々あります。そうなると納期が最優となり、コストは後回しになることもある。それは現場として当然の判断です。

問題は、こうした発注の積み重ねが完工後まで可視化されない点でした。

予算編成部としては、組んだ数字と最終実績を比較・検証し、次案件へ活かしたい。しかし実績は現場側に留まり、リアルタイムでの把握は難しい。結果として改善は常に“次の案件”に持ち越される。この構造的な乖離が、長年の課題です。

データでつなぐ、作図・購買の仕組み

――BALLASとの取引のきっかけを教えてください。

柴崎 最初の接点は約1年半前でした。本格的に検討を始めたのは、私が現場から予算編成のポジションに戻ったタイミングです。

当初は製作金物の鋼材調達の提案でした。正直に言えば、「コスト面で優位な取引先」というだけであれば、ここまで深く検討はしなかったと思います。

印象に残ったのは、図面作成から発注、納品管理までを一貫して担い、その履歴をデータとして蓄積するという考え方でした。

いつ、どの図面で、どの仕様で、どの工場に、いくらで発注し、その後どのような変更や追加があったのか。そうした情報が時系列で整理されることで、案件の動きが“流れ”として見えてくる。

これまでは完工後に実績をまとめて初めて把握できていたコスト変動も、工期の途中で捉えられる。それは単なる管理強化ではなく、予算の妥当性をその場で検証できるという意味を持ちます。

予算編成部のチャレンジは「より精度の高い予算策定」です。そのためには実績値との比較が不可欠です。

BALLASとの連携は、取引先を増やすことではなく、実績データを蓄積し、原価精度を継続的に高めていく仕組みを持つことだと感じました。調達の一部を任せるというより、調達プロセスそのものにデータの軸を通す。その点が、取引開始の決め手でした。

需給を最適化する供給ネットワーク

――特注部材の取引における期待についてはいかがですか。

柴崎 現在も多くの現場では、それぞれの関係性を軸に発注しています。それは現場力の源でもあり、私はその在り方を否定するつもりはありません。

ただ一方で、急場の案件であっても、通常時と大きく条件及び費用が乖離しない選択肢があるかどうかは重要だと感じています。

問題は価格の“高さ”そのものではなく、価格の“振れ幅”です。

BALLASは特定の工場に依存せず、複数の製作工場ネットワークを前提に供給体制を構築されています。案件ごとに最適な工場を選定し、ネットワーク全体で生産能力を調整することで、繁忙期や急な案件でも余力のある製作ラインを探すことができる。

その結果、納期を優先しながらも極端な単価に振れにくくなる。これは現場にとって現実的なメリットです。だからこそ、新しく立ち上がる現場の職長にはBALLASを紹介するようにしています。

現場職長または担当者ごとの発注判断を置き換えるのではなく、その判断を支える選択肢を広げること。需給を個別最適ではなくネットワーク全体で捉えることで、調達の安定性を一段引き上げられる可能性があると感じています。

「施工できる図面」を知る立場から見た、3D連携の価値

――長年、現場で施工図を描いてこられたそうですね。

柴崎 20年近く現場に関わってきました。
先輩から教えられたのは「素敵な図面と施工できる図面は違う」ということです。

図面上で配管がつながっていても、職人が作業できなければ意味がない。機械が納まるか、干渉はないか、作業スペースは確保できているか。常に頭の中で3Dに組み立てながら図面を描いてきました。現在の現場では、Rebroという3DCADソフトとTfasを併用しています。

しかし、建設現場と工場のあいだでは依然として2Dベースのやり取りが主流です。設計(発注)側が3Dで作成したデータをPDFに落とし、工場は2D図面で製作し、再び2Dで戻す。その過程で3D→2D→再び3Dという読み替えが発生し、解釈のズレや情報ロスが生まれます。結果として現場での加工調整や再製作が発生することもよくあります。

BALLASとはRebro形式で3Dデータをそのまま共有できます。2Dへ変換せずに製作要件を確認し、そのまま検図まで進められる。干渉や寸法違いを事前に発見できるため、手戻りのリスクを抑えられます。図面の精度向上は、そのまま工程の安定化と原価ブレの抑制につながります。

図面を起点に、設計(発注)・調達・製作が同じ情報を共有する。その仕組みは、調達改善にとどまらず、サプライチェーン全体の質を高める取り組みだと感じています。

これまでの常識にとらわれず、価値あるものを選び取る

――スタートアップである弊社のシステム利用にあたり、社内で不安やハードルはありませんでしたか。

柴崎氏 近年、企業においては業務継続性やデータ管理の重要性が一層高まっており、業務効率化のために構築したはずのシステムが、かえって業務を止めてしまうという事態も多く発生しています。そうした事態を踏まえ、弊社でもデータ管理の在り方を改めて見直すタイミングと重なったことが、御社システムを利用検討する一因となりました。

私たちにとって重要なのは、それがスタートアップの提供するものであるかどうかではありません。本質的に価値があるかどうか。有益な情報や仕組みであれば、積極的に取り入れるべきだと考えています。さまざまな選択肢に触れたうえで、自分たちにとって最適なものを見極め、選択していく姿勢が大切なのではないでしょうか。

もちろん、新しい取り組みには戸惑いも伴います。しかし、データを活用した仕組みを前提に業務を進めることが“当たり前”になる時代は、確実に訪れると感じています。

――最後に、今後の展望や弊社へのエールをお願いします。

柴崎氏 予算編成を担う立場として、これまで“見えなかった部分”を数値化し、精度を高めていくことを大切にしています。御社との取り組みを通じて実績データを蓄積し、今後の原価検討に活かせる比較基準を築いていきたいですね。

安定供給と適正価格の維持、そして地域のサプライチェーンを守るという御社の挑戦には大きな意義を感じています。今後のさらなる進化にも期待しています。

多様な価値観が尊重される時代においては、従来の企業観に固執せず、業種の枠を越えて情報を取り入れていく姿勢こそが、一歩先を行く行動につながるのだと思います。

これからも情報交換を重ねながら、両社がともにより良い未来へ進んでいければ嬉しいですね。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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